CBDC(中央銀行デジタル通貨)とは

CBDC(中央銀行デジタル通貨)とは – 特徴、仕組み、世界の動向を解説

CBDC(中央銀行デジタル通貨)とは

新しいお金のかたち「CBDC」って何だろう?基本から世界の動きまで、やさしく解説します。

1. CBDCの基本原則

新しい形態の「公的なお金」

中央銀行デジタル通貨(CBDC)は、中央銀行が発行するデジタル形式の通貨です。その本質は、現金(紙幣や硬貨)がデジタルになったものと考えることができます。最も重要な特徴は、民間企業が発行する電子マネーや銀行預金とは異なり、**中央銀行が直接的な支払いを保証する「負債」**であるという点です。これにより、CBDCは最も安全なデジタル決済手段としての役割を担うことが期待されています。

CBDCは主に、一般の家計や企業が利用する「リテール型」と、銀行間の決済に用いる「ホールセール型」に大別されますが、本レポートでは主にリテール型CBDCに焦点を当てます。重要なのは、CBDCは現金を代替するものではなく、あくまで補完する存在として構想されている点です。

引用元: 日本銀行, イングランド銀行, Digital Pound Foundation, TMI総合法律事務所

開発の背景にある戦略的目標

⚡ 決済のデジタル化への対応

現金利用が減少し、決済が急速にデジタル化する中で、国民が安全な中央銀行マネーにアクセスし続けられるようにする必要性が高まっています。

🛡️ 通貨主権の維持

外国のCBDCや民間のグローバル・ステーブルコインが国内で普及すると、自国の金融政策の効果が損なわれる恐れがあり、それに対抗する防衛的な意味合いがあります。

💡 イノベーションの促進

CBDCを官民が連携して構築するプラットフォームとすることで、民間企業が新しい金融サービス(例:条件付き支払い)を開発することを促し、経済全体の競争力を高めます。

引用元: 日本銀行, イングランド銀行, 衆議院, Ripple

2. 仕組みと運用フレームワーク

官民パートナーシップ:二層構造モデル

日本や英国などで検討されているCBDCの基本的な構造は「二層構造モデル」です。これは中央銀行と民間企業が役割を分担し、協力してCBDCを国民に届ける仕組みです。下の図の各要素をクリックして、その役割を確認してください。

① 中央銀行

コアシステムの提供者

② 民間仲介機関(銀行・決済事業者など)

利用者へのサービス提供者

③ エンドユーザー(個人・企業)

CBDCの利用者

上の図の各要素をクリックすると、ここに詳細な説明が表示されます。

引用元: 日本銀行, イングランド銀行

「追加サービス」によるイノベーション

二層構造モデルの目的は、単に決済手段を提供することだけではありません。中央銀行が提供する基盤の上に、民間企業が創意工夫を凝らした「追加サービス」を構築することを促します。例えば、特定の条件が満たされた際に自動で支払いが実行される「プログラマブルペイメント」や、家計簿サービスとの連携などが考えられます。これにより、決済にとどまらない新たな価値の創出が期待されています。

引用元: 日本銀行, Ripple

3. デジタルマネーの比較分析

CBDC、ステーブルコイン、銀行預金、電子マネー。これらはすべてデジタルなお金ですが、その性質は発行者の「負債」という観点から見ると大きく異なります。下のボタンから比較したい対象を選択してください。

中央銀行デジタル通貨 (CBDC)

      デジタルマネーの形態別比較表

      特徴 中央銀行デジタル通貨 ステーブルコイン 商業銀行預金 電子マネー
      発行主体 中央銀行 民間事業者 商業銀行 民間事業者
      負債の法的性質 中央銀行の直接負債(公的なお金) 民間発行者の負債(私的なお金) 商業銀行の負債(私的なお金) 民間発行者の負債(私的なお金)
      信用リスク なし(国家の信用) 発行者固有の信用・オペレーショナルリスク 銀行固有の信用リスク(預金保険で緩和) 発行者固有の信用リスク(資産保全義務で緩和)
      決済完了性 即時かつ最終的(中央銀行決済) プラットフォーム設計に依存 銀行間決済レベルで最終的 利用者間では最終的
      主な目的 汎用的な決済、通貨のアンカー 決済、暗号資産エコシステムへのゲートウェイ 価値の保存、汎用的な決済 特定用途の決済、少額取引
      引用元: 日本銀行, イングランド銀行, Digital Pound Foundation, 森・濱田松本法律事務所

      4. 法規制と主要な論点

      CBDCの導入は、技術的な課題だけでなく、法律、プライバシー、金融システム全体に関わる重要な論点を提起します。ここでは、CBDCを社会に実装する上で乗り越えるべき大きな課題について探求します。

      ⚖️ 法的地位の確立

      CBDCが広く使われるためには、現金と同様に支払いを完了させる法的な力(法貨性)を持つ必要があります。また、相続や差押えの対象としてどのように扱われるかなど、私法上の性質を明確に定義する新しい法律や法改正が不可欠です。技術の進歩に左右されない「技術中立的」な法整備が求められています。

      引用元: 財務省, TMI総合法律事務所

      🔒 プライバシー保護とデータガバナンス

      国民の最大の懸念は、取引データが政府や中央銀行に監視されることへの不安です。これに対し、二層構造モデルでは、個人を特定できる情報は民間仲介機関のみが管理し、中央銀行は匿名化されたデータのみを扱う設計が検討されています。英国ではプライバシー保護を法律で保証すると明言するなど、国民の信頼を得るための取り組みが鍵となります。

      引用元: 日本銀行, イングランド銀行, 財務省

      🏦 金融安定への影響

      金融不安時に、人々が安全なCBDCを求めて銀行預金を一斉に引き出すと、銀行の貸出能力が損なわれ、金融システムが不安定化するリスク(ディスインターミディエーション)があります。このリスクを管理するため、CBDCの保有額に上限を設けるなどの「セーフガード」が検討されており、適切なバランスを見つけることが重要な課題です。

      引用元: 日本銀行, イングランド銀行, Digital Pound Foundation

      5. 世界の動向と民間セクターの役割

      CBDCの検討は世界的な潮流となっています。主要国・地域の開発状況をグラフで比較し、それぞれの戦略的なアプローチの違いを確認しましょう。グラフの各項目にカーソルを合わせると詳細が表示されます。

      主要国・地域の戦略的アプローチ

      日本:慎重な準備者

      「発行する計画はない」としつつも、パイロット実験を進め、将来の変化に迅速に対応できるよう万全の準備を整えるアプローチ。

      英国:熟慮を重ねる設計者

      国民との対話を重視し、プライバシー保護などを法律で保証することを約束。将来の必要性に備え、詳細な設計フェーズを進行中。

      ユーロ圏:戦略的自律性の追求

      デジタル化への対応と通貨主権の維持を目的とし、ルールブックの策定などを含む「準備フェーズ」に移行。

      中国:明確な先行者

      大規模なパイロット実験を世界に先駆けて実施。決済効率の向上と人民元の国際化を目指す。

      引用元: 日本銀行, イングランド銀行, 衆議院